渡り鳥のクロスロードきらら浜自然観察公園

 本州の最西端に位置する山口県は、中国大陸、ロシア東北部やカムチャツカ半島から日本列島を縦断して東南アジアへ渡る鳥たちや、中国大陸、朝鮮半島を経由して日本へやってくる鳥たちの交差点に位置している。瀬戸内海側にあるきらら浜自然観察公園は、九州や四国にも近いため多くの野鳥が訪れる。
生まれ変わった阿知須干拓地

 1964年に国営干拓事業で完成した286haの阿知須干拓地は、23年という時間の中で二次的な自然が再生し、周辺の豊かな環境とあいまって、243種類の野鳥をはじめとし多くの生き物たちの楽園となっていたが、土地の有効活用のため、1987年から再埋め立てが行われ、1998年北側の一角を残し埋め立ては完了し、阿知須町きらら浜が誕生した。残された30haには2001年4月27日山口県立きらら浜自然観察公園がオープンし、かつての阿知須干拓地に生育、生息していた野鳥を中心とする多様な生態系の保全がされている。
観察公園ビジターセンター

 観察ホールには固定式のフィールドスコープが30台、可動式のフィールドスコープ10台が設置されている。生き物検索ができるパソコンや、リアルタイムで映像を映し出している観察カメラ、干潟やヨシ原のジオラマ、きらら浜の生き物展示などにより公園の自然情報が提供されている。レクチャーホールには多彩な視聴覚機器が備えられ、自然環境学習や体験学習を行うことができる。
         
           きらら浜自然観察公園 ビジターセンター

ビジターセンター内の展示


ビジターセンター内 観察コーナー

きらら浜自然観察公園の環境

 かつての阿知須干拓地(286ha)に生育・生息していた野鳥を中心とする多様な生態系を保全するために、30haの圏内には大きく五つの環境が整備されている。
淡水池

 メダカやギンブナ、チチブなどの淡水魚が生息し、春には多数のトンボ類が発生する。カイツブリやバン、オオバン、カルガモが繁殖し、冬は多くのカモ類で賑わう。
ヨシ原

 淡水泥湿地にはヨシが群生し、夏にはオオヨシキリやクイナ類、カルガモ、ヨシゴイが繁殖し、冬にはオオジュリン、ツリスガラなどヨシ原の冬鳥が多く見られる。
干潟

 年間を通してサギ類に利用され、春・秋の渡りシーズンには多くのシギ・チドリ類が採餌、休息を行う。冬は多くのカモ類やミサゴが見られる。山口湾と同じく潮の満ち引きがある。
汽水池

 淡水と海水が干潟で混じりあい汽水となった水が流れ込み池となっている。藻類やプランクトンが多く、海水性の生き物が多く生息している。
樹林帯

 きらら浜周辺に自生している樹木の中から、塩分や潮風に強く、実のなる木34種類を選び約25,000本が植栽されている。成長すると外からのしゃへい林として園内の環境を守る役割も果たす。
きらら浜自然観察公園の周辺環境

 きらら浜自然観察公園に隣接する山口湾は瀬戸内海の周防灘に面し、遠浅で穏やかな海が広がっている。干満の差は最大4mにもなるため、大潮の干潮時には約350haの干潟が現れる。
 干潟には多くの生き物が生息し、夏にはカブトガニの産卵も見られる。干潟を利用する野鳥も多く、特に公園北側の土路石川河口は春・秋の渡りシーズンには多くのシギ・チドリが利用し、秋から冬にかけては飛来したカモ類が多く、ツル類やコハクチョウ、ガン類が飛来するとねぐらに利用する。
 公園南側と西側には約200haの草地が広がっており、ヨシの群落もあちこちに見られ、ヨシ原や草地に生息する小鳥類が四季を通じて見られ、秋から冬にかけては猛禽類も多く、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ハイタカ、オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、コチョウゲンボウ、コミミズクなどが見られる。
 公園に飛来する鳥類は、周辺環境と公園をうまく利用しているものが多く、きらら浜周辺の豊かな自然環境が多様な生物を支えているといえる。
 公園内北側の土路石川に隣接して建っている観察展望棟から、きらら浜の自然環境を広く見渡すことができる。
         
           土路石川河口干潟(観察展望棟より)
自然観察公園の四季

春(3月、4月、5月)

春は繁殖の季節、野鳥たちのさえずりが公園にあふれる。 ヒバリやセグロセキレイが繁殖をはじめ、4月にはヒナの姿を見ることができる。淡水池ではカイツブリの縄張り争いで賑やかになる。干潟では4月〜5月にかけて旅鳥のシギ・チドリが繁殖地へ戻る途中に立ち寄っていく。4月下旬にはヨシ原にオオヨシキリが戻ってきて、一日中さえずりをはじめる。
夏(6月、7月、8月)

 夏鳥のヨシゴイが戻ってきてヨシ原で繁殖をはじめる。淡水池ではカイツブリやオオバンの子育てが観察できる。サギはコロニーのヒナへのエサ運びに大忙し。7月下旬からヨシ原にツバメがねぐらを作る。8月下旬になるとその数2万羽。ほかにもトンボやカニなどいろいろな生き物を観察することができる。
秋(9月、10月、11月)

 秋は渡りの季節、ヨシ原をたくさんのコヨシキリやノゴマが通過して行くと、北国で子育てをしたカモたちが次々と戻ってくる。ツバメなどの夏鳥は南下をはじめ、虫の声が秋の気配を感じさせる。春に繁殖地に行ったシギが再び南へ渡る途中に立ち寄る。11月は一年で最も野鳥の多い月。思わぬ珍鳥に出会える楽しみがある。
冬(12月、1月、2月)

 冬はなんといってもカモの季節、公園の池は13種類のカモで賑わう。ヨシ原ではオオジュリン、ツリスガラなどの冬の小鳥たちが多く見られる。それを狙うタカ類、自然のドラマが繰り広げられる。ミサゴは毎朝大きなボラを捕まえてきて干潟のクイで朝食、毎年コハクチョウもやってくる。不定期的にマガンやヒシクイ、ナベヅルなど大型の鳥が見られるのもこの季節である。
きらら浜の野鳥

 きらら浜及びその周辺で観察された鳥類は2003年10月現在247種類。きらら浜自然観察公園が2001年4月にオープンして以来、公園の中だけで観察された鳥は2001年137種類だったが2003年には157種類となり、少しずつ増加している。今後さらに増えていくものと期待される。

シロガシラ


オオカラモズ


コホオアカ


ノゴマ


アカツクシガモ


クロツラヘラサギ


マガン


コハクチョウ


ズクロカモメ