レッドデータブックやまぐち
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山口県の鳥類の概要

 本州の最西端に位置する山口県は、日本海と瀬戸内海によって三方を海に囲まれており、北海道、長崎県に次いで全国で三番目に長く複雑な海岸線をもっており、島嶼も多い。一方山地については、中国山脈が広島、島根との県境地帯である本県の東北部で急に低くなっており、標高1,000mを越える山岳地帯は山口県内ではこの地域だけであり、大部分は低い丘陵性台地と平野によって占められている。
 県内には鳥類の生息に適した多様な環境があることや、本州の最西端に位置し、中国や朝鮮半島とも近く、渡りのコースにもなっていることから渡り鳥の渡来も多い。
 山口県内で過去に記録のある鳥類は、小林ほか(2000)によれば2000年12月現在で、18目66科374種にものぼり、このうち写真記録があるのは、18目60科332種である。また、山口県内で繁殖確認あるいは繁殖の可能性がある鳥類は、14目38科92種が記録されている。山口県にはこれら多くの鳥類が生息、繁殖するが、近年繁殖が記録されなくなったものや、生息数が減少した種も少なくない。そこで山口県に生息する生物(鳥類)を末永く未来へ引き継ぐためにも、その現状を調査し、減少傾向の著しい種、絶滅のおそれのある種を山口県版レッドデータブックの掲載種としてリストアップし、保護策を講じることの意義は大きい。
 山口県版レッドデータブック(鳥類)のカテゴリーについては、基本的には環境庁が示した減少率等の数値による客観的基準に基づく新カテゴリーに準拠する事とした。基本的な考え方は、数値基準に基づいて評価することが可能な種については「定量的要件」を適用する。しかしながら評価可能な数値データが得られない種も多いことから、「定性的要件」を併用することとする。カテゴリー定義については総説に譲る。
 山口県版レッドデータブック作成に当たって鳥類分科会では、減少傾向等が総説で別記するカテゴリーの「定量的要件」あるいは「定性的要件」に該当するか把握するため、現地調査と文献調査を行った。
 文献調査では鳥類の生息状況や飛来状況の変化を定量的に解析したものとしては、山本・脊戸(1997)による日本野鳥の会山口県支部実施の探鳥会記録をもとに夏鳥の減少傾向について解析した論文、日本野鳥の会山口県支部の実施した、春と秋の渡り期のシギ・チドリ類の県内一斉調査21年間の解析、同じくガン・カモ・ハクチョウ類の県内一斉調査10年間の解析等の他、サギ類のコロニーに関する調査、ナベヅルの飛来状況の調査・解析等、限られた種についてだけであった。幸いなことに夏鳥については日本野鳥の会山口県支部が1990年に行った山口県版鳥類繁殖地図調査、環境庁が1978年に行った鳥類繁殖地図調査があり、冬鳥については環境庁が1988年に行った動物(冬鳥)分布調査があるので、これと対応する現地調査を、山口県内全域を対象に国土地理院発行の1/25,000地形図を上下、左右四等分した区画を単位とした約300地点について、鳥類の繁殖期と越冬期にそれぞれ最低各1回実施した。収集できた観察記録数は繁殖期分約10,000件、越冬期分約9,000件の合計約19,000件である。併せて、日本野鳥の会山口県支部会員の協力を得て、県内全域を対象に鳥類の観察記録を収集した。件数は約10,000件である。他に上記文献関係の約5,000件と併せて総合計約34,000件の記録を収集し、繁殖分布地図、冬鳥分布地図化し比較を行った。
 以上の調査結果をもとに選定された山口県レッドリスト(鳥類)は別記102種である。内訳は、絶滅は古文書に記録の残るトキとタンチョウの2種、絶滅危惧IA類は山口県の県鳥のナベヅルやブッポウソウ等11種、絶滅危惧IB類は食物連鎖の頂点に立つ森林性のクマタカ、減少傾向が極めて顕著なヤマドリ等4種、絶滅危惧II類はツクシガモ、ズグロカモメ、カラスバト等の他、かっては里山の代表的な夏鳥のサシバや河原や砂州でよく見られたシロチドリを含む22種、準絶滅危惧は63種で、湖沼を代表するカイツブリ、水田や畑地帯で見られるヒバリ、夏鳥のササゴイ、カッコウ、オオヨシキリ、サンコウチョウ、冬鳥のマガン、ヨシガモ、ツリスガラ等が調査によって減少傾向が確認されたため選定された。
 環境別に掲載種を概観すると、ヨシ原等に生息するヨシゴイ、ヒクイナ、オオヨシキリ、ツリスガラ。湿地・干潟に渡り期に渡来するアカアシシギ、セイタカシギ、ホウロクシギや、越冬のためやってくるマガン、ヨシガモ、ツクシガモ、ズグロカモメ。これらの場所は埋め立てられ宅地・工業用地・農地などに変わり次々と消失している。湖沼に生息し繁殖するカイツブリ、越冬のためダム湖等に飛来するオシドリ。ここでは富栄養化・ブラックバス等の外来魚の侵入、湖沼へのボートの乗り入れ等が、個体数の減少や生息環境の悪化をまねいている。河川上流部のヤマセミ、カワガラス。中下流域のシロチドリ、イカルチドリ、コアジサシ。護岸のコンクリート化が進み、特に中下流域では自然のままの所はほとんど無くなってしまった。水田・畑のチュウサギ、ヒバリ、ヒシクイ、マガン、タマシギ、ナベヅル。農薬使用による餌資源の減少や、減反による荒廃は特に山間の棚田で著しい。里山のサシバ、オオタカ、ヤマドリ、ノスリ。農業・林業従事者の高齢化等による荒廃や、マツクイムシ等による営巣に適した壮齢樹の減少。山地にはクマタカ、ブッポウソウ、サンコウチョウ、サンショウクイ、オオルリ、センダイムシクイ。営巣木の減少等の他、夏鳥の多くは越冬地である東南アジアの森林伐採等の環境破壊による減少も一因と思われる。島嶼・岩礁ではカラスバト、オオミズナギドリ、クロサギ、ミサゴ、ウミネコ等の繁殖が確認されており、比較的良好な状態が維持されているが、釣り等で気づかないうちに人が営巣環境に入り繁殖を阻害する可能性もある。
このようにレッドデータブックの掲載種の中には、つい最近まで身近だった野鳥も数多く含まれている。山口県版のレッドデータブックが作成された機会に、選定された種を含めた多様な生物が生息できる豊かな環境を保全する効果的な保護策が実施されることを期待したい。
 最後にレッドデータブックの掲載種の選定にあたり、現地調査、文献調査に御協力いただいた日本野鳥の会山口県支部の会員の方々をはじめ、観察記録や写真を提供いただいた多くの方々の協力に対し、この場を借りてお礼申し上げる。
(小林繁樹)

参考文献(鳥類概要部)
山口自然研究会 1965,小林繁樹・小川孝生・梶畑哲二・川元 武・原田量介 1999,2000,
小林繁樹 1999,小林繁樹・原田量介 2000,環境庁 1988,1991,1998,山本 裕・脊戸宣裕 1997,
日本野鳥の会山口県支部 1973,1975,1977,1979,1990,1993,1994,
山口県野生鳥獣調査団 1982,1985a,1988, 1990,1993,1996,河村宣樹 1996a,西田 智 1996,
日本野鳥の会 1980, 環境庁自然保護局生物多様性センター 1999

(凡 例)
 
執筆担当
各種別の執筆担当は以下のとおりとなっている。
小川孝生
カラシラサギ、コウノトリ、ヘラサギ、クロツラヘラサギ、コクガン、マガン、ヒシクイ、 サカツラガン、オオハクチョウ、コハクチョウ、トモエガモ、カワアイサ、ハチクマ、オオタカ、 ツミ、ハイタカ、ノスリ、クマタカ、コアジサシ、ジュウイチ
梶畑哲二
ヒメクロウミツバメ、ヒメウ、サンカノゴイ、ヨシゴイ、オオヨシゴイ、ミゾゴイ、ミヤコドリ、イカルチドリ、ケリ、シベリアオオハシシギ、アカアシシギ、カラフトアオアシシギ、ホウロクシギ、コシャクシギ、ヤマシギ、セイタカシギ、ツバメチドリ、ウミスズメ、カンムリウミスズメ
川元 武
ササゴイ、ヨシガモ、ヒクイナ、カッコウ、ヤマセミ、アカゲラ、オオアカゲラ、アカモズ、カワガラス、トラツグミ、クロツグミ、センダイムシクイ、オオルリ、コサメビタキ、ツリスガラ、コガラ、ヒガラ、ホオアカ、クロジ
小林繁樹
カイツブリ、オオミズナギドリ、チュウサギ、クロサギ、トキ、ツクシガモ、オシドリ、ミサゴ、サシバ 、ウズラ、ヤマドリ、タンチョウ、ナベヅル、タマシギ、シロチドリ、ウミネコ、ズグロカモメ、カラスバト、オオコノハズク、ヨタカ、ブッポウソウ、ヒバリ、サンショウクイ、オオヨシキリ、サンコウチョウ

原田量介

ハイイロチュウヒ、チュウヒ、ハヤブサ、コチョウゲンボウ、チョウゲンボウ、マナヅル、オオバン、ヘラシギ、トラフズク、コミミズク、コノハズク、アオバズク、フクロウ、アマツバメ、アカショウビン、ヤイロチョウ、コマドリ、コルリ、ゴジュウカラ

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