椹野川河口域・干潟自然再生全体構想

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平成17年3月

目次

はじめに
1.自然再生の基本的な考え方と方向性
  (1)基本的な考え方
  (2)方向性
2.自然再生の対象となる区域
  (1)区域
  (2)椹野川河口干潟等の現況及び変遷
     1)陸域での現況及び変遷
     2)海域での現況及び変遷
  (3)現況評価
3.自然再生の目標
  (1)目指す姿
  (2)具体的な目標
  (3)目標を達成するための取組
  (4)取組の進め方
4.自然再生協議会の役割分担及び構成
  (1)協議会委員、地域住民等の役割
  (2)役割分担表
  (3)自然再生協議会の構成
別資料
  資料1 椹野川河口域・干潟自然再生協議会設置要綱(別ページへリンクします)
  資料2 協議会委員名簿(別ページへリンクします)


はじめに

 椹野川は山口市北部の龍門岳等にその源を発し、山口盆地や山口市・小郡町の市街地を流れ、周防灘の山口湾に流入している。椹野川河口域から阿知須、岩屋にかけての山口湾においては、西瀬戸内地域有数の広大な干潟が広がり、シベリアやカムチャツカから日本列島を縦断して東南アジアに向かう渡り鳥たちと、モンゴルや中国から朝鮮半島を経由し四国・九州へ横断する野鳥たちのクロスロードとなっており、日本の重要湿地500にも選ばれている。さらに、絶滅危惧種であるカブトガニの生息地にもなっており、全国的にも非常に重要な地域である。また、かつて山口湾は漁業において、宝の海であった。

 しかしながら、椹野川干潟では、上中流域からの浮泥流入、生活排水対策の遅れ、人口増加による様々な影響等により、カキの増殖やカキ殻の堆積、泥浜干潟の拡大、さらに、魚、カニ、野鳥など生息している生物の量、種類の減少といった干潟生態系の改変・改質が生じてきている。

 このため、干潟生態系に影響を及ぼしている流域全体の現況調査を行った上で、上流から下流までの環境関連施策を盛り込み、産学官民の連携・協働による『やまぐちの豊かな流域づくり構想(椹野川モデル):イメージ図参照』を平成15年3月に、策定したところであり、この構想に基づき、河口の干潟や山口湾では、干潟の再生やアマモ場の造成に係る実証試験、野鳥などの調査、海浜清掃等を関係主体が連携して、様々な取組を進めているところである。

 豊かな流域づくりの一環として、椹野川河口干潟等の再生の取組を今後さらに効果的に進めるには、自然再生推進法による枠組みを活用することが有効と考えられる。このため、地域住民、NPO等、学識者、地方公共団体、関係行政機関などで構成する「椹野川河口域・干潟自然再生協議会」を平成16年8月に設立したところであり、地域の多様な主体の参画による合意形成と、産学官民の連携・協働による事業実施をこれまで以上に進めたいと考えており、本全体構想を定めるものである。

 なお、本全体構想については、自然再生の状況に応じて、今後、必要な見直しをするものとする。


1.  自然再生の対象となる区域

(1)基本的な考え方

本全体構想では、「やまぐちの豊かな流域づくり構想(椹野川モデル)」及び「自然再生基本方針」を踏まえて、@椹野川河口域、干潟及び山口湾(以下「椹野川河口干潟等」と称する。)の生物多様性の確保、A流域の多様な主体の参画と産学官民の協働・連携、B科学的知見に基づく順応的取組の3つの視点を基本として、自然再生を推進するものとする。

椹野川河口干潟等は、日本の重要湿地500にも選ばれ、様々な鳥類もおり、絶滅危惧種であるカブトガニの産卵・生息場でもあり、非常に重要な地域である。また、アクセスも良く人が親しみやすいという位置にある。

しかしながら、浮泥が堆積するなどして、アサリを始め魚介類が激減し、カキが増殖してカキ殻の堆積が拡大するとともに、人々とのかかわりが減るなどして、かつてのような豊かな干潟や宝の海ではなくなっている。

こうしたことから、この河口干潟等の望ましい将来像として、人が適度な働きかけを継続することで、自然からのあらゆる恵みを持続的に享受できる場、いわゆる『里海』の再生を目指すこととする。

■「里海」の再生とは

人と生き物が共存できるところを取り戻すこと。
生活・なりわいとのかかわりあいの維持向上ができるところを取り戻すこと。
水産業をはじめとする各種産業や生活への影響を最小としつつ、生物多様性の確保や向上ができること。
多くの住民等が親しめるところを取り戻すこと。
資源が豊かで、恵みを享受できる豊かな干潟、宝の海を取り戻すこと。

この『里海』の再生の方法については、現状の椹野川河口干潟等の環境が悪化し、そのままでは回復困難な状態と考えられることから、「やれることからやっていく」という考え方と併せて、悪化した原因やメカニズムを科学的に探求しながら、順応的に再生を進めていくことにする。

なお、椹野川河口干潟等の再生については、場所ごとに自然・社会的背景等が異なるため状況に合わせて適切な施策を講じていくことにする。

■再生とは

保全:
 良好な自然環境が現存している場所においてその状態を積極的に維持すること。
再生:  
 自然環境が損なわれた地域において、損なわれた自然環境を取り戻すこと。
創出:  
 自然環境がほとんど失われた地域おいて、その地域の自然生態系を取り戻すこと。
維持管理:
 再生された自然環境の状況をモニタリングし、その状態を長期間にわたって維持するために必要な管理を行なうこと。

(自然再生基本方針より抜粋)

※「順応的取組」とは、自然再生事業が、複雑で絶えず変化する生態系その他の自然環境を対象とした事業であることから、地域の自然環境に関し専門的知識を有する者の協力を得て、自然環境に関する事前の十分な調査を行い、事業着手後も自然環境の再生状況をモニタリングし、その結果を科学的に評価し、これを当該自然再生事業に反映させる方法である。

(2)方向性

 再生のキーワードを踏まえ、椹野川河口干潟等の現況、椹野川流域での変遷や変化を把握し、現況の分析・評価を行った上で、河口干潟等の再生の目標を「里海の再生」と位置づけて、取り組みを進めることとし、その関係を図1-1に示す。


2.  自然再生の対象となる区域

(1)区域

椹野川流域全体図は図2-1に示すとおりである。椹野川は山口県内の二級河川では4番目に広い流域面積(322.4km)を有する河川で、山口市北部の龍門岳(標高688.4m)等にその源を発し、山口盆地や山口市・小郡町の市街地を流れ、途中で仁保川、一の坂川、吉敷川、四十八瀬川など大小24の支流と合流し、周防灘の山口湾に流入している。

椹野川河口域から阿知須、岩屋にかけての山口湾に広がる西瀬戸内地域有数の広大な干潟(約344ha)は、渡り鳥や野鳥たちのクロスロードやカブトガニの生息地であり、日本の重要湿地500にも選ばれている全国的にも非常に重要な地域である。


図2-1 椹野川流域全体

 椹野川河口域・干潟自然再生協議会で検討する自然再生の対象区域は、図2-2に示す椹野川河口干潟等とする。


図2-2 自然再生の対象区域

(2)椹野川河口干潟等の現況及び変遷

1)陸域での現況及び変遷

○森
 
手入れの行き届かない森林が増加している。森林の変化は図2-3に示すとおりであり、スギ、ヒノキの針葉樹が主体の人工林と竹は増加し(昭和47年と平成14年を比べるとそれぞれ35%、15%の増加)、広葉樹が主体の天然林は減少している(同14%減少)。

○土地利用
 
水稲作付面積の変化は図2-4に示すとおりであり農地から住宅地等への転用が進んでいる。この5年間で1,080ha減少し、保水機能等の低下が懸念される。

○人口
 
関係4市町(山口市、小郡町、阿知須町、秋穂町)では昭和60年から年間約1,200人程度の人口増加がみられる。

○生活排水処理
 
生活排水の処理人口の変化は図2-5に示すとおりであり、下水道と農業・漁業集落排水処理施設及び合併処理浄化槽による処理率は関係4市町で、昭和60年の18%から平成13年度には67%に向上している。

○水収支
 朝田流量観測所での河川流量の変化は図2-6に示すとおりであり、平成3年の平水流量約12m/sが近年1m/s程度と減少傾向である。最大流量は年によって変動するが、同様に減少傾向である。一方、利水状況は、現状で上水道0.7m/s、農業用水16.4m/sの取水が行われており、上水道の取水量は年々増加している。

○汚濁負荷量
 
汚濁発生負荷量のうちBODは昭和63年の4,889トン/年に比べて平成13年には約半分の2,590トン/年、T-Pは153トン/年に比べて約15%減少している(図2-7参照)。また、T-Nは平成7年からの推移であるが平成10年をピークとして減少傾向である。

○農薬散布
 農薬出荷額の変化は図2-8に示すとおりであり、昭和60年をピークとして減少している。出荷数量でみると、平成13年では昭和60年に比べて約30%に減少している。使用農薬も低毒性、低残留性、生物由来の農薬へ移行している。



2)海域での現況及び変遷

@地形改変、干潟分布状況

 椹野川河口域から阿知須、岩屋にかけての山口湾における干潟は図2-9に示すように約344haが現存している。また、同図に自然海岸及びヨシ原の位置を示す。
 山口湾での埋立の変遷は図2-10に示すとおりであり、寛永3年(1629年)に長妻開作・新開作、名田島の開作(干拓)が始まり、昭和2年(1927年)に百聞橋下流の約170haの干拓、昭和39年(1963年)に阿知須干拓地(286ha)の干拓、昭和44年(1969年)に周防大橋の東南部の幸崎干拓地(約60ha)が終了し、これ以降山口湾での埋立は行われていない。
  また、漁場改善・保全事業として昭和54年に周防大橋上流で1,700m、平成元年〜3年度に総延長約8,000mの作れいが造成されている(図2-11参照)。



A干潟等の状態

○底質環境
 昭和51年と平成15年における泥分分布を図2-11に示す。51年と比べると山口湾の北側の干潟で泥分が高くなっている。また、アサリ漁が盛んであった新地潟や南潟では泥分に大きな変化は認められないが、有機物量(CODや強熱減量など)が半分程度に減少している。

○底生生物
 平成16年6月の底生生物調査では11動物門145種が出現しており、門別では環形動物、節足動物、軟体動物が多い。主な出現種は軟体動物のマガキ、環形動物のイトゴカイ、節足動物のニホンドロヨコエビであった。出現種は、椹野川河口や相原、土路石川河口、長浜前面で環形動物が多い。また、周防大橋北側ではカキ殻の生息基盤が存在するため種類数、個体数も多く、軟体動物、環形動物、節足動物が出現している。

○漁業生産
 山口市と阿知須町の小型底びき網漁業を除く漁獲量は、昭和50年(水揚高は約1億6,000万円)に比べると約1/10となっており、近年は100d/年で推移している(図2-13上図参照)。山口湾での採貝による漁獲高は昭和50年で653トン(図2-14にアサリ分布域を示す)であったが、平成3年以降は0〜5トンと壊滅状態であり(図2-13下図参照)、クルマエビなどの砂浜生物の漁獲も激減した。

○カキ殻分布
 
椹野川河口干潟等での特徴として、周防大橋北側海域でカキの増殖、カキ殻の堆積が見られる。昭和51年に比べてその分布域も拡大しており、平成15年時点では、被度40%以上が36.0ha、それ以下は51.3haとなっている。カキ塊の堆積厚さは10〜67cmで干潟利用上、大きな支障となっている(図2-15、図2-16参照)。

図2-16 カキ殻分布の現況

○水質(栄養塩類、SS)
 
椹野川での栄養塩(N,P)の濃度変化を図2-17に示す。なお、他の河川との比較のために木屋川、厚狭川の水質も併せて記載する。T-Nで見ると、その他の河川が0.6〜0.8mg/l前後でほぼ横這い傾向であるのに比べ、平成14年度には1.5mg/lと高くなっており、年々増加する傾向を示している。一方、T-Pも同様の傾向を示しており、最近では、昭和63年当時と比べると約2倍の濃度の0.14〜0.16mg/lとなっている。

また、河川のSSの状態を木屋川、厚狭川のデータも併せて図1-15に示す。椹野川水系では他の河川に比べてSS濃度は高い傾向にある。


○アマモ
 山口湾のアアマモ場の分布の変化は図1-16に示すとおりであり、1953年の調査では湾全域に約700haの面積を占めていたが、1984年には長浜沿岸と阿知須干拓沖の一部に、2002年の調査では約10haに激減している。


○鳥類

 平成15年6月から翌年2月までに確認された種類数は9目14科58種で、総個体数の分布では、きらら浜自然観察公園や新地潟周辺,南潟,椹野川で多く確認されている(図2-20参照)。確認された鳥類を調査月別にみると2月が38種と多く、7月が最も少なく8種であった。鳥類の種数は10月からカモ類の増加が確認されており、個体数でも増加が確認されている。渡りや越冬が関係しているものと考えられる。

 サギ類は5種が確認され、ダイサギが最も多く、山口湾内の干潟及び河口で確認されており、場所による出現状況の差は明確にみられていない。また、サギ類については、岩屋に山口県内最大の集団繁殖地があり、干潟を餌場としても利用している。カモ類は13種類が確認され、マガモが最も多く、きらら浜自然観察公園や新地潟周辺,南潟,椹野川河口で多く確認されている。チドリ類は6種類が確認され、シロチドリが最も多く、きらら浜自然観察公園前面や新地潟、南潟で確認されている。シギ類は11種類が確認され、ハマシギが最も多く、きらら浜自然観察公園前面や新地潟、南潟、確認数は少ないが南若川河口域で確認されている。そのほか、数は少ないがカイツブリ類が周防大橋の南側海域で、カワウが波多瀬周辺と椹野川河口で確認されている。

 なお、鳥類全体では種類、数とも減少したと言われ、飛来地が移動したとの説もある。

○カブトガニ
 カブトガニの産卵場や生育場を図2-21に示す。産卵場は粗砂質で山口湾では比較的広範囲に分散しており、良好な状態である。一方、幼生は孵化後4年から5年後の9、10齢まで生育場である砂泥質に留まるため、現存の生育場である南潟等では干潟が砂質化傾向であることが問題とされている。

(3)現況評価

 椹野川流域の陸域及び椹野川河口干潟等での現況及び変遷を整理した結果、椹野川河口干潟等は、底質環境や浄化能そして底生生物の豊かさという尺度で類型化を行うと、『椹野川河口上流域』、『周防大橋上流部』、『南潟、新地潟、本川河口直前』、『長浜、阿知須地先』に分類され、次のようにまとめることができる。

〇河口上流域は河川本来の粗砂質性状を示しており、生物多様性は劣っている。
〇周防大橋上流域は泥分80%前後の泥浜干潟であるが、透水性の高いカキ殻層の存在により好気状態となっており、カキ殻が他の生物の付着基盤としての機能を発揮していることから生物多様性は優れており、生物量は多い。
〇南潟、新地潟は底質の調査の結果を、泥分(粒度)、強熱減量、COD、硫化物等の物理、化学指標に照らしてみると、生物生息には好条件であるものの、餌となる含有有機物量が少ないことから、生物現存量、生物多様性は低い。なお、両干潟を比較すると南潟の方が、含有有機物量は多く、生物多様性は高い。
〇長浜、阿知須地先は底質の泥分が少なく細砂、中砂分が多いといった物理的性状は、生物の生息には好条件である。また、底質に含まれる有機物量の少なさから見て、この干潟が持つ高い有機物分解能力がうかがえる。しかしながら、生息している生物は周防大橋上流域に比べて種類数及び個体数とも少ない状況である。

 このように、椹野川河口干潟等は、上記のような特質を有しており、河口域・干潟全体としては、以下のような課題がある。

@ 周防大橋上流域の中潟はアサリを始めとした魚介類の良漁場であったが、カキの著しい増殖や浮泥の堆積等によって、他の有用魚介類が生息できなくなり漁場の生産機能が低下している。また、鋭利なカキ殻は危険であり、人の立入りを困難にしている。なお、カキ殻を生息基盤とする生物やカイガラアマノリなど希少種が生息している区域では保全が必要である。
A 場所ごとに状況は異なるものの、生物の生息環境としては好ましくない次のような変化が干潟に生じている。○泥干潟の拡大 ○浮泥の堆積 ○アサリの減少に伴う採貝耕耘の機会の減少に起因する底質の硬質化 ○生物の餌資源である含有有機物量の減少 等 
B アマモ場は様々な生物の産卵場所や生息場所の提供、干潟地盤の安定性の向上など多くの機能を有している。このアマモが、かつて山口湾のほぼ全域で約700ha分布していたが、現在では、約30haに激減している。
C 椹野川河口干潟周辺は、高潮対策のための高い垂直護岸が多く、また干潟に降りる階段も少なく狭いなど干潟に近づきにくい状況であり、親水性の低下を招いている。
D  山口湾の水質や底質環境の形成要因となる流れに着目すると、山口湾の海水の流れは比較的大きいにもかかわらず、海域・水域において、雨水流入等による濁りが解消されにくい状況である。

 こうした状態を放置していくと、更なるカキ分布域の拡大とカキ殻の堆積、浮泥の堆積、一方では干潟の硬質化、無機質化が進み、干潟生物やカブトガニ、鳥類などの生息・生育環境を維持することは難しくなると考えられ、科学的な調査研究を進めながら、何らかの手だてを講じていく必要があると考えられる。


3.自然再生の目標

(1)目指す姿

 自然再生の目標は、「干潟等においては、そこに生息する多様な生物群集により、生態系内における良好な物質循環が円滑に進み、干潟等が有する生物生産機能、生物生息機能、水質浄化機能及び親水機能などの多面的機能が高いレベルで持続的に保たれる状態、すなわち、人が適度な働きかけを継続することで、自然からのあらゆる恵みを持続的に享受できる場、いわゆる『里海』の再生を目指すこと」とする。

(2)具体的な目標

 椹野川河口干潟等は、場所によって様々な自然・社会状況を有していることから、図3-1に目標を達成するための自然再生ゾーニングを示す。
 また、ゾーニング毎の目標を表3−1に示す。


表3-1 各ゾーン及び全区域の目標

目指す区域
(ゾーン)

目標(目指す状態)

豊かな泥干潟区域

@中潟の北側においては、カキの増殖が抑えられ、泥分が適度に低下し、アサリ、エビ、カニ類等の多様な生物が多数生息できる干潟環境になっている。
A中潟の南側においては、カキ・カキ殻と共生しているカイガラアマノリ等の希少種の生息環境が保全されている。

豊かな砂干潟区域

@南潟や新地潟においては、硬質化、無機質化した干潟が改善され、アサリ、エビ、カニ類等の多様な生物が多数生息できる干潟環境になっている。
Aカブトガニの幼生が生息できる環境(泥分の比較的多い砂干潟)も可能な限り維持されている。
B野鳥の餌場となっている干潟が保全されている。

カブトガニ産卵場保全区域

現在のカブトガニの産卵場所が保全されている。

豊かなアマモ場・浅場区域

@多様な生物が、多数生息できる干潟や浅場及びアマモ場となっている。
Aアマモ場が拡大し、稚貝の沈着場、その他海生生物の生育場になっている。
B地域住民が容易に立ち入って利用できる等、親水性が確保されている。

豊かな泥浜・レク干潟区域

@野鳥の餌場となっている泥浜が保全されている。
A生物の生息環境が悪化している泥浜が適度に砂質化し、環境が改善されている。
B泥浜を活用した遊び場やレクリエーションの場が確保されている。

豊かな後浜(背後地)区域

@土路石川河口部のヨシ原や鳥類餌場などが保全されている。
A地域住民、学校等が利用できる背後地が確保されている。

現状干潟の観察・維持区域

現状干潟域に手を付けずに、変化状況の観察を継続している。

全区域にわたる共通事項

全体として、里海、宝の海となっている。
@海域・水域は、適度な栄養塩類があり、濁りが少なくなるなど人や生き物にとって、良好な環境となっている。
A多くの住民等が干潟等に親しんでいる。


(3)目標を達成するための取組

 自然再生の目標を達成するための各ゾーン及び全区域の取組の概要は、表3-2に示すとおりである。
 また、目標を達成するために、短期的に取り組めるものは、当初から進め、中長期的に取り組むべきものは、科学的知見の集積を基礎としながら必要な方法を定め、事業着手後も干潟等の再生状況をモニタリングし、その結果を科学的に検証し、結果を反映させ、場合によっては修正するなどして、再生事業をさらに進めていく、順応的な方法により実施していくものとする。

表3-2 目標を達成するための各ゾーン及び全区域の取組

目指す区域(ゾーン)

取  組

表中の丸付番号は、表3-1の目標(目指す状態)に対応する。
また、取組の記号は、●:短期的に(当初から)取り組むもの
◎:中長期的に取り組むもの     を示す。

豊かな泥干潟の区域

@ ●カキ殻層が持つ透水性を活用して、アサリ、エビ、カニ類等の多様な生物の生息に適した干潟(底質)へ改善するために、干潟(底質)の上層と下層の土砂の置換、または粉砕したカキ殻や堆積砂との混合等を通して、底質の粒度や海抜(地盤高)を調整する。
A ●カイガラアマノリの保全のために、カキ及びカキ殻層が表面を覆っている底質に手を付けない。

豊かな砂干潟の区域

@、A ●カブトガニの生育に配慮し、生息場所を保全しながら、硬質化、無機質化した干潟を南潟での実証試験結果や他県での成果等を参考にし、耕耘などの手法により再生・維持管理する。
B ●野鳥の餌場として良好な環境を保っている干潟の区域にはできるだけ手をつけず保全に努める。

カブトガニ産卵場保全区域

@  ●干潟に点在しているカブトガニの産卵場所は良好な環境を保っているため、この区域には手をつけず保全に努める。

豊かなアマモ場・浅場

@、A ●アマモの移植、播種等により、アマモ場の再生、維持管理を行う。
◎貝類などの生息環境を改善するため、干潟や浅場を造成するとともに、波浪の影響の低減や光条件の向上などを図ることにより、アマモ場の造成を行う。
B ●護岸から海へのアプローチを整備する。
◎親水関連施設(後浜整備、潮干狩り、レクリエーション施設、自然体験学習施設等)を整備する。

豊かな泥浜・レク干潟

@ ●野鳥の餌場として良好な環境を保っている干潟の区域には手をつけず保全する。
A ●一部区域では砂質土による客土を行い、干潟を再生する。
B ◎泥遊びなど泥と直接触れ合える遊び場である泥浜やレクリエーション場を後浜と連携した形で区画設定する。

豊かな後浜(背後地)の区域

@ ●土路石川河口部の汽水域に現存するヨシ原や鳥類摂餌場などは、手をつけずに保全する。
A ◎後浜と干潟を利用した自然体験活動、環境学習場所、潮干狩りや散策などの場を設定する。

現状干潟の観察・維持区域

@ ●深溝地先の生物多様性が高いカキやカキ殻の存在する場、岩屋地先のカブトガニが生育する場等についての変化状況を観察しながら手をつけずに維持する。

全区域にわたる共通事項

◎椹野川河口干潟等の課題の解明や再生方法の検討などのための研究を行う。
◎海域・水域の水環境の改善に関係者の連携・協働により取り組む。
●浅海・干潟観察会や気軽に参加できるイベントなどを開催し、自然に親しむ体験や学習の場を提供する。
●普及啓発として、椹野川流域フォーラムの開催、保全や再生に住民が参加できる仕組みづくりや産学官民のネットワークづくりを行う。
●事業の実施後は、効果等を確認するため環境モニタリングを実施する。
●ホームページなどを利用し干潟での取組や出現する干潟生物などの様々な情報の管理・提供等に取り組む。
●干潟等との共生による地域のイメージづくり、その発信等に取り組む。


(4)取組の進め方

[調査・事業の進め方]

@目標の設定

  • 事業対象地の状況に応じて、実施計画ごとに具体的な目標を設定する。

A科学的調査・計画

  • 対象となる区域の自然環境の特性や生態系に関する知見を活用し、自然環境が損なわれた原因を科学的に調査し、明らかにするなど、その十分な集積を基礎としながら、自然再生のための計画を立案する。

B事業

  • 事業実施の際には、事業実施計画に基づき、必要に応じて希少種等に配慮しながら、事業を実施する。
  • 一度に大規模事業を行わず、小規模な実験的な事業から着手する。

Cモニタリング・評価、順応的管理

  • 事業の進捗状況を踏まえ、自然再生のプロセスが当初の仮説どおりか否かをモニタリングする。仮説と異なる結果が出た場合には、手法を柔軟に見直す「順応的管理」を行う。

D干潟等の再生に向けた研究

  • · 潟等の再生に向けて、課題点の解明など更なる研究を進め、科学的知見に基づいて再生に必要な方法を検討し、更に、事業着手後も再生状況をモニタリングするなど、順応的に進めるために科学的な研究を進めていく。

[事業推進の仕組み]

@産学官民の連携・協働

  • 上記のプロセスの各段階で、地域住民、NPO等、学識者、地方公共団体、関係行政機関など各方面の人々との連携・協働で行う。

A情報の公開と共有

  • 調査、事業の合意形成の前提として、基本的に、モニタリング結果、事業効果の評価等全ての情報はホームページ等を使って公開し、住民、地元関係団体、専門家をはじめとする関係者が情報を共有できるようにする。

4.自然再生協議会の役割分担及び構成

(1)協議会委員、地域住民等の役割

 本全体構想に掲げている目標を達成していくために、自然再生協議会委員は相互に連携・協力して、様々な立場の人々の意見等を踏まえながら、それぞれの役割分担に応じて取組を進めていくこととする。
 また、地元自治会など地域住民や関係教育機関等に協力・参加を求めて、干潟や海だけでなく、流域にかかわりのある産学官民が連携・協働のもとに、進めていくこととする。
 なお、事業実施計画毎に、取りまとめ役を決めて、必要に応じて、具体的な役割分担を定めることとする。

(2)役割分担表

 協議会への参加者及び教育機関など協力参加を願う機関の役割分担は表4-1に示すとおりである。

表4-1 役割分担表

作業項目

作業内容

協議会参加主体

協力参加を願う主体

事業実施者

学識者

公募委員

関係自治体

地元自治会等

教育機関

個人

団体

豊かな泥干潟の再生

・カキ殻分布域での上下層置換、カキ殻粉砕片や堆積砂との混合等による底質改善
・ カキ・カキ殻との共生


助言

 


協力


協力

   

豊かな砂干潟の再生

・カブトガニの生育に配慮し、干潟を耕耘などにより再生・改善


助言


協力


協力


協力


協力

カブトガニ産卵場保全

・干潟に点在しているカブトガニの産卵場所を保全・維持


助言


協力


協力

豊かなアマモ場・浅場の再生

・アマモ場の再生・維持管理
・干潟・浅場造成そして、アマモ場造成
・親水関連施設(後浜整備、潮干狩り、レクリエーション施設、自然体験学習施設等)の整備


助言


協力


協力


協力

 


協力

豊かな泥浜・レク干潟の再生

・野鳥の餌場として現状環境を保全
・一部区域では客土等を行い、干潟を再生
・ 泥遊びなどの泥浜やレクリエーション場の設定


助言


協力


協力

 


協力

豊かな後浜(背後地)の再生

・ヨシ原、鳥類摂餌場などを保全

・後浜と干潟を利用した自然体験活動、環境学習場所、潮干狩りや散策などの場の設定


助言

 


協力


協力


協力

現状干潟の観察・維持

・カキやカキ殻の存在する場、カブトガニが生育する場等についての変化状況を観察しながら維持


助言

 


協力


協力

全区域を対象とした共通項目

・干潟等の課題解明、再生方法検討等の研究
・海域・水域の水環境の改善への取組
・自然体験などの環境学習・教育
・住民が参加できる仕組みづくり
・産学官民のネットワークづくり
・事業の環境モニタリング
・様々な情報の管理・提供 等


協力


協力

※ 助言は参加できなくても、技術的な教授や意見等を述べる。

協力は支援をしたり、実際に参加する。

(3)自然再生協議会の構成

 椹野川河口域・干潟自然再生協議会の設置要綱及び委員会名簿は別資料を参照のこと。


別資料

資料1 椹野川河口域・干潟自然再生協議会設置要綱(別ページへリンクします)

資料2 協議会委員名簿(別ページへリンクします)


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